みんながんばれ、俺もがんばれ

楽器を演奏する人はおそらく誰もがそういう素質を持っているのでしょうが、私も非常にワガママだし、自分の音をお客さんに印象付けたいと思っているし、目立ってナンボだと思っているし、面白くない楽譜なんて吹いてられない、という人です。そんな自分かれすれば、音が小さいし、吹いてて面白くないし、重要な役割も与えられていないし、目立たない楽器を吹くなんて嫌です。そういう評点から見れば、アルトクラなんておそらくバンドの中で最悪な部類でしょう。
でも、合奏は一人で行うものではなく、みんなで作り上げていくものです。各人がそれぞれ割り当てられた役割を果たさなければ、合奏なんて成り立ちません。B♭クラリネットの役を与えられればB♭クラリネットに求められる役割を充分に果たし、アルトクラの役を与えられればアルトクラに求められる役割を充分に果たさなければなりません。「この楽器は面白くないから嫌だ」と与えられた役を蹴りだせば、合奏なんて成り立ちません。
 
アルトクラは音も小さいし、音楽の土台を構築するような楽器でもないし、前面に立って目立つような楽器でもないし、基幹的な役割も与えられていないし、ソロや単体で目立つ部分もないし、そもそもバンドに居なくても問題なく曲を演奏できるような「オプション楽器」です。
そもそもアルトクラを吹いている俺自身が、吹奏楽の中でアルトクラが存在する意義や、アルトクラのあるべき理想の姿が全く解っていませんが、アルトクラにはある程度は音の方向性の定まった中に音を溶け込ませて音の響きを豊かにするなど、バンドの演奏に肉付けをするような演奏、言い換えれば既にある方向性の中に音を潜り込ませる演奏を行うことが求められています。
そのため、なかなか思ったとおりの演奏が出てこないバンドで演奏していても、「そこ、美味しい部分だから、スカスカ外さずにちゃんと吹けよ!」とか、「もっとカッチリとハリのある音でピシッと正確に吹いてくれないと、いつまで経っても曲が仕上がりませんよ」とか、「その部分、楽器ごとに全然バラバラになってるから、もっとアンサンブルを考えて吹いてくれよ」など、演奏に対する不満感が溜まるばかりで、吹いていて面白くありません。
さて私ができる事といえば、「もちろん俺も頑張りますから、端っこの方でモゾモゾっと吹いている俺を悲しませない程度の演奏をしてください」とお願いする事でしょうか?
 
みんながんばれ、俺もがんばれ