楽隊のうさぎ、第三楽章

実はもう読み終わりましたが、「楽隊のうさぎ」の続きを。

主人公である奥田君の通う中学校がこの年(1997年)のコンクール出場曲として選んだのが、課題曲4番「ラ・マルシュ」(稲村穣司)と、「バレエ組曲シバの女王ベルキス』」(レスピーギ)でした。 ラ・マルシュ、また微妙な。それと、この年はレスピーギネタかよ!

ちなみにこの年の課題曲はどんなんだったかと調べてみると。

  • 課題曲1 マーチ「ライジング・サン」(新井千悦子)
  • 課題曲2 マーチ「夢と勇気、憧れ、希望」(内藤淳一)
  • 課題曲3 五月の風(真島俊夫)
  • 課題曲4 ラ・マルシュ(稲村穣司)

夢勇気憧れ希望キター! この曲を聴くと、なぜか今でも阪急百貨店指揮者の鈴木氏を思い出してしまうのですが。っていうか、前年と差がありすぎ!

ちなみに私の入っていた楽団は3の「五月の風」を演奏したのですが、いま私がこの中から一曲だけ選ぶのだったら、やっぱり3の「五月の風」を選択するかなぁ。マシマシの曲調って昔から好きだし。っていうか「三日月に架かるヤコブのはしご」、俺も一度は吹きてぇ。



さて、この年は無事並クラ*1にてコンクールに出場! わずか一年でアルトクラからオサラバできました。っていうか、この頃って普通の曲ではアルトクラを使ってなかった訳だが。ちなみに普通じゃない場合(どんな場合だよ)のアルトクラの担当は、やっぱり私だったりする訳ですが。。。
 

小説から話しがずれますが、この本の作者のホームページによると、作者の中沢さんは、「楽隊のうさぎ」の中でラ・マルシュが取り上げられていることを知った作曲者である稲村さんから連絡を受けたとのこと。また「シバの女王」を編曲した小長谷さんからも、「バンドパワー」を通じて連絡を受けたとのこと。いろいろな人から連絡を受けているんですね。
中沢けい公式サイト|豆畑の友

さて奥田君が通う中学校ですが、この年は8人の新入部員を迎えたとのこと。奥田君のパートにも新人として丸川繁君、通称マルちゃんが加わったそうな。 って、マルちゃんかよ! この後、小説の中でも「マルちゃん」が連呼される訳だが。


コンクールが始まる直前の時期、奥田君は部活の練習を休み、博多に住んでいる伯父さんの所へ旅行に行きました。この旅行は彼が行きたかった訳ではなく、どうしても彼の母親が彼を連れて行きたかったために決まった旅行でした。

この旅行にどうしても彼女の子供である主人公を連れて行きたかった理由や、その時の彼女の心情などは小説を読んでいただくとして、やっぱりコンクール直前のこの時期、奥田君はどうしても練習を抜けたくなかったようです。その理由とは、彼が練習を抜けることによって、彼が抜ける数日間、彼が担当しているティンパニ抜きで合奏を行わなければならない事態となるためです。彼の心の中で育ちつつあった「責任感」というものが、彼が練習を抜けることを咎めたのでしょう。

たとえ一人の欠席であれ、全員が揃わねば、本番と同一の状態で練習を行うことはできません。ましてや彼の担当パートは曲の中心となるティンパニー、彼は自分が休むことによって部の仲間全体に迷惑をかけることをおそれたのでしょう。そんな彼の入っているクラブですが、余裕で練習を休んでも良い雰囲気になっているクラブとは違い、家庭の事情であれ練習を休むことも憚られるような雰囲気になるほどクラブがまとまっているからこそ、良い演奏ができるのかもしれませんね。


ちょうど奥田君が九州を訪れたその時期、小倉では「祇園太鼓」というお祭りが開催されていました。この「祇園太鼓」で演奏されている太鼓のリズムと歌が、彼の心の中に深く刻み込まれることとなりました。
小倉祇園 八坂神社
そうそう、お祭りでもついつい音楽のほうに耳が行ってしまいますよね。先日も同じく吹奏楽界出身の会社の人間と一緒にお葬式に出席する機会があったのですが、その人も私と同じく複数人のお坊さんによって唱えられるお経の掛け合いやハーモニー、木魚やお鈴が奏でるリズムの方に耳が行っていたそうです。こういうのも吹奏楽の後遺症っていうのかな?


ちなみに主人公の奥田君が練習を抜けたのはたった3日間、にも拘らず彼は、彼とバンドとの間に大きな溝ができたかのように感じてしまったそうです。たった3日間、されど3日間。夏休みの3日間の練習といえば、練習時間が1日12時間だったと仮定すれば、36時間もの練習になってしまいます。3日前の感覚と同じ感覚で合奏に参加すれば、彼とバンドとの間には36時間ものズレがあるので、そこに深い溝を感じてしまったのでしょう。


この後、主人公の奥田君の母と単身赴任中の父との間に生じてしまった心の溝、他の学年に比べて圧倒的に多い奥田君の学年の部活内での存在感、おそらく主人公が以前から気にしていたであろう「フルートのソリストになるから」と部活を辞めることになった田中さんとの会話、コンクールでの演奏中に発生した突発的な事故の話などが続き、いよいよ舞台は吹奏楽の聖地である普門館へ! 普門館で奥田君たち花の木中学吹奏楽部を待ち受けているものは?