吹奏楽コンクールの参加規定

エキストラ

すいそうがく2006年6月号()に掲載された、連盟総会での質疑応答の中で、
「一般の部の大会参加者の資格確認を。」
という参加者からの質問に対し
「団員であることが条件で、エキストラの参加は認めない。団員の資格として、職業演奏海外は自由である」
と全日吹連側が回答した質疑応答が掲載されていました。
これにより、現在の「全日本吹奏楽コンクール実施規定()」では明文として禁止されていないコンクールへの「エキストラ」の出演が、公式に禁止されたことになります。
ちなみに一般の部の参加資格はこの部分。たしかに「エキストラ禁止」とは一言も書いていません。

全日本吹奏楽コンクール実施規定(抄)
(資格)
第7条 各部門の参加資格は次の通りとする
5.一般の部
団体構成メンバーは次の第8条に該当しない限り自由とする。ただし、職業演奏家の参加は認めない。

第8条 同一奏者が二つ以上の団体に重複して出場することは認めない。課題曲・自由曲は同一メンバーが演奏しなければならない。ただし楽器の持ち替えは認める。

ちなみに一般の部に楽団を登録するための要件をチェックするため、連盟の「加盟団体に関する登録規定()」をチェックしてみると、

加盟団体に関する登録規定(抄)
第2条(加盟の資格)
2.年間を通じ定期的に練習または演奏活動を行なっている楽団であること。
3.一般部門の団員資格は音楽大学学生・音楽大学出身者などの立場を問わない。
4.同一人が複数の団体の構成員となることはできる。ただしコンクール出場などの場合にはコンクールなど実施規定の定めるところによる

とのこと。「年間を通じ定期的に練習または演奏活動を行なっていない楽団」をコンクール会場で目にしている気がするのですが、、、アレって気のせいだったんですね。
ついでに「定款」もチェックしようと思ったのですが、こちらは工事中。定款が工事中で見られない社団法人とは如何なものか。
 
しかしこの程度のヌルい規定では、「実はコンクールの日だけ団員なんです」とか、「コンクール直前に入団しましたが、コンクールが終わればすぐ退団します」といった苦しい言い逃れが通用してしまいそうな気が。
二重登録や無資格者のコンクール出場を防ぐためには、あらかじめ連盟に対して演奏者登録を行なって演奏者IDを発行し、各楽団から演奏者IDを記載した団員名簿の提出を受け、大会出場登録時には団員名簿に一定期間以上名前が記載されおり、重複申込がなされておらず、なおかつ連盟が出場資格を有すると判断した人間でないと大会への参加登録が受理されないような仕組みを作らなければならなりません。 めんどくせー!
 
なお非常によくある話ですが、上記の仕組みをシステムとして作るのは非常に簡単なのですが、では誰が実際の事務作業を行なうかという点で激しく躓く訳です。

職業演奏家

この「職業演奏家の参加は認めない」という規定もクセモノです。というのも、具体的にどういった属性の人間が職業演奏家に該当するのかが全く規定されておらず、かなり曖昧な定義のような気が。
単純に考えれば吹奏楽界で活躍しており、そこで生活の糧を得ているプロ吹奏楽団の団員などがこれに該当するのでしょう。さらに解釈を拡大し、プロオーケストラの団員などもこの分類に含まれるのでしょう。
プロ吹奏楽団やプロオーケストラに客演奏者として出演するものの、楽器演奏の収入だけではとても生活できるだけの収入が得られず、他の収入の方が多いという人も居ると耳にしたことがありますが、では彼らは「職業演奏家」に該当するのでしょうか?
さて、もしもプロオーケストラで弦楽器奏者として活躍する団員が吹奏楽コンクールに管楽器奏者として出場すれば、彼は「職業演奏家」に該当するのでしょうか? 少なくとも彼は管楽器奏者としては素人ですし。また、もしもロックバンドでギタリストとして活躍するミュージシャンが吹奏楽コンクールに管楽器奏者として出場すれば、彼は「職業演奏家」に該当するのでしょうか? 少なくとも彼はこの規定が本来想定している出場制限対象であろう「クラシック業界のプロ奏者」ではありません。
音楽活動で収入を得ているといえば、学校の音楽科の教諭やピアノ講師として活躍する人たちもプロに属します。彼らレッスンプロも「職業演奏家」に含まれているのでしょうか?
さらに厳しく、かつてスポーツ業界で一世を風靡した「マチュア規定*1」を準用すると、一度でもイベントでの演奏やエキストラでの出演で謝礼を貰ったことがある人間はプロとして扱われてしまうため、私も職業演奏家に該当してしまいます。そんな私でもコンクールに出場でるのでしょうか?
 
結局、どこからどこまでが吹連が規定する「職業演奏家の範囲なの?

*1:なお詳しくはアマチュアリズム - Wikipediaを参照。この規定によれば、
1.金のために競技するもの
2.プロ選手とともに競技するもの
3.体育教師・トレーナー
4.マネキン的競技者
はアマチュアに該当しない。また、ジム・ソープ事件や、共産諸国のステートアマと休業補償問題、カール・シュランツの追放処分などを考慮すると、1.はかなり広く解釈されていたようだ