バレエ音楽「ガイーヌ」

最近、かなりお疲れ気味のためか「バレエ音楽『ガイーヌ』(A.ハチャトリアン作曲)」をヘビーローテーション気味に聞いています。

ハチャトゥリアン:「ガイーヌ」&「スパルタクス」

ハチャトゥリアン:「ガイーヌ」&「スパルタクス」

多くの人が親しみを覚える「剣の舞」、吹奏楽界の人間なら一度は演奏してみたい「レスギンカ」など、名曲ぞろいのガイーヌ。ガイーヌの音楽からは色濃くオリエンタルな民族色を感じますが、ガイーヌのテーマはアルメニアの、剣の舞はクルド族の、レスギンカはレスギ族の、それぞれ民族音楽から旋律が引用されているそうです。アルメニア人の血を引き、グルジアで生まれのハチャトリアンは、幼い頃からアルメニアコーカサス地方民族音楽の強い影響を受けて育ったためか、彼の作曲した音楽からは色濃く東洋的な色彩が漂っています。彼の音楽から漂ってくる東洋的な色彩に、私も魅力を感じます。
 
さて、皆さんはガイーヌのあらすじってご存知ですか? 実は「舞台はアルメニアコルホーズ(ソ連の国営農場)、女主人公のガイーヌは、夫のギコが犯した公金横領の罪をを告発しようとする。夫はそれを隠すために妻のガイーヌを殺そうとする。それを警備隊長が助け、ガイーヌはこの警備隊長と結ばれる。めでたしめでたし」という、アルメニアで実際にあった事件を元に作られた物語だそうです。
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ソヴィエト連邦ロシア革命共産主義、農業集団化、コルホーズ(集団農場)、農村社会、女性農業労働者、公金横領、不正を許さない英雄的女性市民、祖国への忠誠心、夫を告発、警備隊長と結ばれる結末、、、 今よりも世界が赤かった時代の空気を色濃く反映した作品に仕上がっています。
それにしても「ガイーヌ」ってコルホーズを舞台にした物語だったとは! この物語を中国風にアレンジし直すと人民公社を舞台にした物語になっちゃいますよ、人民公社! ガイーヌって人民公社を舞台にした物語だったんですか(驚) 人民公社なんて、きょうび中国にも残存してませんし(汗)
思想統制、反対派の粛清、人権弾圧、一党独裁、秘密警察、強制収容所、地上の楽園、大飢饉、偉大なる将軍様マンセー、、、 さまざまな言葉が脳裏をよぎりました(汗)
 
そんなガイーヌ(1939年作曲)ですが、かの有名な「レスギンカ」は当時ソヴィエトに君臨していたスターリンの出身地の民族音楽を題材にしているとのこと。ちなみに1948年にショスタコービッチが作曲した「ラヨーク」という「ジダーノフ批判(⇒ジダーノフ批判 - Wikipedia)」を風刺して作曲した風刺音楽の中で、作曲家同盟大会でレズギンカが褒め称えられる場面があるそうですが、こんな作品が見つかったら銃殺刑か強制収容所@シベリア送りですよね・・・ もちろんこんな音楽が公開される訳は無く、代わって公開されたのがかの有名な「オラトリオ『森の歌』」だとのこと。
偉大なる指導者様をマンセーしなきゃいけない赤い国の中の人って、本当に大変そうだなぁ。。。